丈夫なわりにはインドア派でスポーツなどもしていなかったですし、家族も似たようなものでした。
長らく病院とは関わりなく生きていきたのです。
もちろん救急車なんて乗ったこともなければ呼んだこともありません。
ですから、あの時は本当に悩みました。
ある秋の朝のことです。
その日の仕事が早番だったので早朝4時に起きました。
寝ぼけ眼で目覚ましを止め、布団から出ようとしたその時です。
腰のあたりに衝撃が走りました。
カックンと何かがズレたような違和感を覚えたのです。えっ?
と思いながら立ち上がろうとすると、今度は雷が駆け抜けました。
猛烈な痛みが頭のてっぺんから足先までをビリビリと走ったのです。
初めてではなかったので、何が起こったのかはすぐわかりました。ぎっくり腰だ!
やってしまった!と思いました。
少しずつ体を動かそうとしましたが、かつて経験したことのないほどの酷い痛み方だということがわかりました。
布団から起き上がることができないのです。
幸いにも携帯が手の届く所にあったので会社に休みの連絡を入れましたが、それから数時間の間、私は布団の中で紋々と悩み続けることになりました。
まったく身動きがとれないのです。
トイレに行きたくてたまらないのに布団から出ることすらままなりません。
友達を呼ぼうにも時間が時間なので電話に気づいてくれません。
あまりにも辛くて、このままでは飲むことも食べることもできず飢え死にしてしまうかも、とまで考えました。
最後には救急車を呼ぼうかと考えました。
しかし、救急車なんて乗ったことがなかったので、そんな大層なことをして良いのかと怯えました。
救急病院は忙しくて救急車の数も限られているので、私なんかが救急車を呼んだために本当に危険な状態にある人が間に合わなかったらどうしようと思ったのです。
それにもしかして「これくらいのことで救急車を呼ぶんじゃない!」と叱られたらどうしようとも考えました。
腰痛は普通、命に関わる病気ではありません。
悩みまくっているうちに、着信に気づいた友達が救出に来てくれたので、119番にかけることはありませんでした。
それにしても、あの時は本当に悩ましく、辛かった出来事でした。